80名のDelivery組織が直面した「進行中粗利の不可視化」をどう解消したか ─ 経理・PM・経営の三者視点
はじめに:80名Delivery組織の「進行中粗利の不可視化」
本記事は、中堅SIer A社(仮名)の導入事例を、経営者・Deliveryマネージャー・経理の三者視点で再構成したケーススタディです。同社が直面していた「進行中粗利の不可視化」を、Salesforce + Task Relayの統合運用でどう解消したか、そのROIを具体的な数字で紹介します。
この記事でわかること
- A社のプロフィールと導入前の3つの課題
- 90日導入プログラムの実装ステップ
- 導入後の数値効果(赤字半減・月次クローズ短縮・粗利率改善)
- 経営者・Delivery・経理の三者視点での変化
第1章:A社のプロフィールと導入前の3つの課題
A社の概要
A社は、設立20年の中堅SIerです。基幹システム開発・Web系受託・保守運用が事業の柱で、従業員約80名(うちエンジニア60名)を擁します。Salesforceは3年前にSales Cloudを導入し、商談・取引先の管理を行っていました。
一方で、案件管理は Backlog、工数管理は Excel、原価集計は経理が月末に手作業——というツール分断状態が続いていました。
課題① 案件粗利が翌月15日まで分からない
月次決算で案件P/Lが確定するのが翌月15日前後。経営会議で「先月のA案件は赤字」と報告された時点で、すでに対策のリードタイムが失われていました。
課題② 赤字案件比率が常時20%
完了案件のうち、計画粗利を下回って終わる「赤字案件」(粗利率10%未満を含む)が常時20%程度発生していました。年間売上12億円のうち約2.4億円分の案件が赤字に近い状態で完了しており、組織全体の営業利益率を圧迫していました。
課題③ 経理の月末作業が属人化・長時間化
経理担当者2名が、月末から翌月15日までの2週間を「全部この作業」に費やしている状態でした。Excelでの工数突合・進捗ヒアリング・仕掛品計算・会計仕訳投入——属人的で監査対応にも時間がかかっていました。
年間売上:12億円|赤字案件比率:20%|月次クローズ:2週間(翌月15日)|経理月末作業:2名×10営業日|営業利益率:6.5%
第2章:90日導入プログラムの実装ステップ
Day 1〜30:基盤整備とパイロット部門選定
Salesforce上にTask Relayをインストールし、基盤マスタ整備を完了しました。
- メンバー60名のフルコスト単価マスタ作成(給与・法定福利・賞与引当・間接費)
- 稼働種別マスタ(新規開発/レビュー/修正/会議/調整/管理)の標準化
- 案件種別ごとのWBSテンプレート(受託開発/保守/インフラ)
- パイロット部門:基幹システム開発チーム(15名)を選定
Day 31〜60:パイロット運用と入力定着
パイロット部門で日次工数入力を開始しました。
- 15分単位ドラッグ入力UIへの切り替え
- 入力率モニタリング(毎日経過確認)
- PMの週次1on1で「自分の案件粗利」をフィードバック
- Day 45時点でパイロット部門の入力率92%、Day 60時点で98%まで定着
Day 61〜90:全社展開と経理連携
全60名のエンジニアへ展開し、経理連携を開始しました。
- 案件粗利ヒートマップを月次経営会議に投入
- 仕掛品計上の自動化(会計ソフト連携)
- 週次レビュー運用の定着(Deliveryマネージャー主催)
- 赤判定案件の介入アクション標準化
第3章:導入後の数値効果
効果① 赤字案件比率:20%→8%に半減
進行中粗利ヒートマップで悪化兆候を週次で捕まえることで、追加請求交渉・要件凍結・リソース入替などのリカバリー策が間に合うケースが激増しました。
導入12か月後、完了案件のうち赤字案件比率は20%から8%へ半減。年間で約1.4億円分の案件が「赤字」から「健全粗利」に転換した計算です。
効果② 月次クローズ:2週間→5営業日
工数日次入力+仕掛品自動計上+会計ソフト連携で、月次クローズリードタイムが劇的に短縮されました。
従来:月末から翌月15日までの2週間(10営業日)→ 導入後:月末から翌月7営業日(5営業日)。経理の月末作業時間は2名×10営業日から2名×3営業日に削減(約140時間/月の削減)。
効果③ 営業利益率:6.5%→9.8%
赤字案件半減と経理工数削減の複合効果で、年間営業利益率は6.5%から9.8%へ。営業利益額は7,800万円から1.18億円へ、約4,000万円増加しました。
効果④ 経営会議の質的変化
従来:「先月のA案件赤字でした」という事後報告中心の経営会議が、「現在赤判定の案件はB・C・Dの3つ、それぞれ介入責任者を決めましょう」という意思決定中心の会議に変化しました。
| 指標 | 導入前 | 導入後(12か月) | 改善効果 |
|---|---|---|---|
| 赤字案件比率 | 20% | 8% | -12pt(半減) |
| 月次クローズ | 2週間(10営業日) | 5営業日 | -50%短縮 |
| 経理月末作業 | 2名×10営業日 | 2名×3営業日 | -140時間/月 |
| 営業利益率 | 6.5% | 9.8% | +3.3pt |
| 営業利益額 | 7,800万円 | 1.18億円 | +4,000万円 |
| 工数入力率 | 60%(月末まとめ) | 98%(日次) | +38pt |
第4章:経営者・Delivery・経理の三者視点
経営者の視点:「進行中粗利が見える組織になった」
「以前は経営会議で先月の確定P/Lを報告されるだけだった。今は週次でヒートマップを見て、悪化案件にその場で介入できる。判断のリードタイムが圧倒的に短くなった」(A社代表取締役)。
Deliveryマネージャーの視点:「PMの自覚と説明責任が劇的に変わった」
「自分の担当案件がヒートマップで赤になると、PMから即座に状況説明と打ち手が上がってくる。可視化されることで、当事者意識が全く変わった」(A社Delivery部長)。
経理担当者の視点:「月末2週間の集計地獄から解放された」
「工数集計と仕掛品計算で月末2週間が消えていた状態から、月初3〜5営業日で確認作業に変わった。空いた時間で、会計の本質的な分析業務に時間を使えるようになった」(A社経理マネージャー)。
第5章:他社が再現するための3つのキーポイント
ポイント① パイロット部門で90日先行
A社は最初から全社展開せず、基幹システム開発チーム(15名)でパイロット運用しました。Day 60で入力率98%まで定着させてから全社展開した結果、抵抗勢力を最小化できました。
ポイント② 経営会議でヒートマップを使う運用を即定着
導入直後(Day 90以降)の経営会議で、案件粗利ヒートマップを必ず議題に上げる運用を徹底しました。「ツールはあるが見ない」状態を防ぐため、経営者自身がヒートマップを開く習慣を作ることが鍵でした。
ポイント③ 経理改革を同時並行で進める
工数管理ツールだけ入れても、月次クローズ早期化は実現しません。経理側の業務フロー(仕掛品計算・会計仕訳・監査対応)を同時並行で再設計したことが、5営業日クローズ実現の決め手になりました。
まとめ:プロジェクト型ビジネスのROIは「進行中粗利の可視化」で生まれる
A社の事例が示すのは、プロジェクト型ビジネスの利益率改善は「現場の頑張り」ではなく「データの可視化と運用設計」で実現するということです。年間売上12億円規模の組織で、3.3ポイントの営業利益率改善=4,000万円の利益増加が、90日のシステム導入と運用設計で実現しました。
導入投資の回収期間は半年程度。中堅SIerにとって、Salesforce + Task Relayの統合運用は、最も投資対効果の高い経営施策の一つになりえます。
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