経営企画 2026.05.06 PageView 0

プロジェクト原価のフルコスト計算|給与だけで計算してはいけない理由

プロジェクト原価のフルコスト計算|給与だけで計算してはいけない理由

単価5,000円で原価を計算している限り、本当の粗利は永遠に見えない

はじめに:「黒字に見えて実は赤字」を生む原価計算の罠

「うちのエンジニアの単価は5,000円」「デザイナーは4,000円」——こうした概算単価でプロジェクト原価を計算している組織は、実際の粗利を大きく錯覚しています。給与だけを基にした概算単価では、組織が実際に負担している人件費の半分も反映できないからです。

本記事では、プロジェクト原価をフルコストで計算するための完全フレームを解説します。経理・経営企画・経営者がまず押さえるべき、原価計算の基礎知識です。

この記事でわかること

  • 概算単価が引き起こす3つの錯覚
  • フルコスト人件費に含めるべき5つの構成要素
  • 社員別フルコスト単価の計算手順
  • Salesforce上で実装する自動原価集計の仕組み

第1章:概算単価が引き起こす3つの錯覚

錯覚① 黒字案件が、実は赤字

受注金額300万円、実工数500時間、概算単価4,000円で計算すると、原価200万円、粗利100万円、粗利率33%——一見すると好収益案件です。

しかし社員ごとのフルコスト単価が実は8,000円だった場合、原価は400万円となり、案件は100万円の赤字です。「概算で黒字に見えていた案件が、フルコストでは大幅赤字」という事態は、多くの組織で日常的に起きています。

錯覚② 利益率改善努力の効果が見えない

概算単価で原価を計算している組織では、人件費の構造が見えていないため、改善施策の効果も正しく測定できません。「会議を減らした」「定例MTGを廃止した」という施策が利益率に何ポイント効いたかが、実態を反映したデータで追えないのです。

錯覚③ 安値受注の判断を誤る

営業段階で「この単価でも黒字」と判断した案件が、フルコスト基準では赤字だった——というケースは少なくありません。安値受注の許容ラインを誤って判断すると、組織全体の粗利率が構造的に悪化します。

原則

フルコスト計算は経理の理論ではなく、経営判断の前提条件。給与しか乗っていない単価で原価を計算している組織は、実態の半分しか見ていない経営をしている。

第2章:フルコスト人件費に含めるべき5つの構成要素

構成要素① 給与(基本給+諸手当)

社員に直接支払われる給与全額です。基本給に加えて、住宅手当・通勤手当・役職手当などすべての諸手当を含めます。残業代も含みます。これがフルコストの最も基礎的な構成要素です。

構成要素② 法定福利費(社会保険料の会社負担分)

健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の会社負担分です。一般的に給与の約15%が法定福利費として上乗せされます。社員側で天引きされる金額とは別に、会社が負担している金額があることを忘れがちです。

構成要素③ 賞与引当金

賞与(ボーナス)の月割引当額です。年2回支給で年間給与の3〜5か月分なら、月給の25〜40%程度を月次引当として原価に含めます。

構成要素④ 退職給付引当金

将来の退職金支払いに備えた月次引当です。退職金規程がある組織では、給与の数%が月次引当として発生します。原価計算上、ここを抜くと長期的な人件費の真実が見えません。

構成要素⑤ 間接費(オフィス・設備・管理部門コスト)

オフィス賃料・設備費・PC・ソフトウェア・管理部門の人件費を、稼働社員数で按分した間接費です。これも「現場が使っているリソース」として原価に含めるのが正しい考え方です。間接費は給与の20〜30%程度になることが多いです。

第3章:社員別フルコスト単価の計算手順

手順① 月次フルコストの算出

社員Aさんの月次フルコストは以下の計算式になります。

  • 月給:50万円
  • 法定福利費:50万円 × 15% = 7.5万円
  • 賞与引当:月給 × 30% = 15万円
  • 退職給付引当:月給 × 5% = 2.5万円
  • 間接費按分:月給 × 25% = 12.5万円
  • 月次フルコスト合計:87.5万円

給与50万円の社員でも、フルコストは87.5万円——給与の1.75倍が実態の人件費です。

手順② 月次稼働可能時間の算出

月の所定労働時間(160時間程度)から、有給休暇・教育研修時間を引いた「実稼働可能時間」を算出します。一般的には月140〜150時間程度になります。

手順③ フルコスト時給の算出

月次フルコスト ÷ 月次稼働可能時間 で、フルコスト時給が出ます。

  • 月次フルコスト:87.5万円
  • 稼働可能時間:145時間
  • フルコスト時給:約6,034円

給与単価で計算すると 50万 ÷ 145h = 約3,448円。フルコスト単価は約1.75倍の6,034円になります。

手順④ 直接稼働率(チャージ率)を加味

社員の稼働全てが案件に直接紐づくわけではありません。会議・調整・社内業務などの間接工数があるため、実際のチャージ率(70%程度が健全)を加味することで、案件原価としての時間単価がさらに調整されます。

第4章:Salesforce上で実装する自動原価集計

実装① メンバー単価マスタ

メンバーごとのフルコスト時給をSalesforceのカスタムオブジェクト(あるいはAppExchangeアプリの単価マスタ)で管理します。半期ごとに見直し、給与改定や昇格時に更新します。

実装② 工数 × 単価 = 原価の自動集計

日次入力された工数レコードに対して、メンバー単価マスタを参照して原価を自動算出します。タスク単位・案件単位・期間単位で原価がリアルタイム集計される状態を作ります。

実装③ 案件粗利の自動算出

商談から継承した受注金額と、自動集計された原価を突き合わせて、案件粗利率がリアルタイムで算出されます。これがダッシュボード・ヒートマップに反映され、経営判断に直結します。

第5章:Task Relayでのフルコスト計算実装

Task Relayは、Salesforce上で動作するプロジェクト&工数管理SaaSとして、フルコスト計算を標準機能で提供します。

  • メンバー別フルコスト単価マスタ(給与・法定福利・賞与引当・退職引当・間接費を分解管理)
  • 工数 × 単価 = 原価の自動集計(タスク/案件/期間別)
  • 商談受注金額と原価から案件粗利率をリアルタイム算出
  • 半期ごとの単価見直しワークフロー
  • 原価ロールアップによる組織別・プロジェクト別の収益性分析
原価項目 給与基準 フルコスト基準 差異
月給 50万円 50万円
法定福利費 計上なし 7.5万円 +7.5万
賞与引当 計上なし 15万円 +15万
退職給付引当 計上なし 2.5万円 +2.5万
間接費按分 計上なし 12.5万円 +12.5万
月次合計 50万円 87.5万円 1.75倍
時給換算(145h) 3,448円 6,034円 1.75倍

まとめ:フルコスト計算は経営判断の前提条件

給与だけで計算した原価は実態の半分しか映していません。法定福利費・賞与引当・退職給付引当・間接費を含めたフルコスト単価で計算することが、正確な案件粗利を出す前提条件です。

まずは自社の現在の原価計算で、これらの5要素のうちいくつが含まれているかを確認してください。給与しか乗っていない単価で計算しているなら、案件粗利は実態より大幅に過大評価されている可能性があります。

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