経営企画 2026.05.06 PageView 0

仕掛品(WIP)会計と工数管理の連動|IFRS/J-GAAP対応の実務

仕掛品(WIP)会計と工数管理の連動|IFRS/J-GAAP対応の実務

未完了プロジェクトの工数を月末資産として正しく計上する、工数管理×会計連携の設計

はじめに:受託会社が苦しむ「仕掛品」という概念

受託開発・コンサル・制作などのプロジェクト型ビジネスにとって、月末に最も悩ましい会計処理が「仕掛品(WIP:Work In Progress)」です。月をまたいで進行する案件の工数は、損益計算上「未完了の作業」として、月末時点で資産(仕掛品)に計上する必要があります。

しかし多くの受託会社では、仕掛品計算が経理担当者の手作業に依存し、月次決算が大幅に遅延する原因になっています。本記事では、工数管理ツールから仕掛品データを自動連携することで、IFRS/J-GAAP対応と月次決算早期化を両立する設計を解説します。

この記事でわかること

  • 仕掛品(WIP)会計の基本と、受託会社が苦しむ3つの理由
  • IFRS と J-GAAP における仕掛品計上の違い
  • 工数管理ツールから仕掛品を自動計上する4ステップ
  • 月次クローズ短縮を実現する経理×PM連携設計

第1章:仕掛品(WIP)会計の基本と、受託会社が苦しむ3つの理由

WIPとは:未完了プロジェクトの「資産計上」

仕掛品(WIP)は、月末時点で未完了のプロジェクトに費やした工数を、損益計算書上の「費用」ではなく貸借対照表上の「資産」として計上する会計処理です。

簡単に言えば、「3月末時点で500時間分の工数を投入したが、検収は4月の案件」の場合、その500時間×フルコスト単価分は3月末の資産(仕掛品)として計上され、4月の検収時に「売上原価」に振り替えられます。

苦しむ理由① 計算が手作業

多くの受託会社では、月末に経理担当者が以下を手作業で行っています。

  • 進行中案件のリストを取得
  • 案件ごとの工数を集計
  • メンバー別単価で原価を計算
  • 案件進捗率を確認し、仕掛品か売上原価かを判定
  • 会計ソフトに仕掛品計上仕訳を入力

この作業は経理担当の月末3〜5日を消費する重労働で、案件数が多いほど精度が落ちます。

苦しむ理由② 工数データと会計データが分断

工数データはExcel・別の工数管理ツールにあり、会計データは会計ソフトに分かれているケースが大半です。両者を突合するために CSV エクスポート・突合 Excel・会計ソフト手動入力という多段階作業が発生します。

苦しむ理由③ 監査対応で説明できない

上場企業や監査対象企業では、仕掛品計上のロジックが説明可能でないと監査で指摘されます。「なぜこの案件の仕掛品が500万円なのか」という根拠が、Excel集計だけでは追えないケースが多発します。

原則

仕掛品は「経理が頑張る業務」ではなく「工数管理から自動算出される資産」と捉え直すこと。月末3日かかっていた仕掛品計上が、工数管理ツールとの連携で1時間に短縮されるケースは珍しくない。

第2章:IFRS と J-GAAP における仕掛品計上の違い

J-GAAP(日本基準)の場合

J-GAAPでは、仕掛品の計上方法は「工事完成基準」と「工事進行基準」が選択できます。

  • 工事完成基準:検収完了まで売上・原価を計上せず、未完了案件の工数は仕掛品として保持
  • 工事進行基準:進捗率に応じて売上・原価を月次按分計上

中小規模の受託案件では工事完成基準が一般的です。月末時点の進行中工数 × フルコスト単価が仕掛品として計上されます。

IFRS の場合(IFRS 15)

IFRS 15では、原則として「履行義務の充足度合い」に応じた収益認識が求められます。受託開発の多くは進行基準(Over-time)の適用となり、進捗率を毎月測定して売上と原価を按分計上します。

この場合も、進捗率の根拠データとして「投入工数」が必須となり、工数管理ツールから自動連携できる仕組みが重要になります。

いずれの基準でも、工数データが「証跡」になる

J-GAAPでもIFRSでも、仕掛品計上の根拠データは「投入工数」です。工数管理ツールが正確なタスク粒度のデータを保持していれば、どちらの基準にも対応できる証跡が自動で残ります。

第3章:工数管理ツールから仕掛品を自動計上する4ステップ

ステップ1:案件ステータスとフェーズの紐づけ

案件レコードに「進行中/検収済/完了」のステータスを持たせ、月末に「進行中」のものを仕掛品計上対象として抽出します。Salesforce上で案件ステータスが管理されていれば、月末バッチで自動抽出が可能です。

ステップ2:月末時点の累計工数集計

進行中案件ごとに、月末までの累計投入工数を集計します。タスク単位の工数データから、案件ロールアップで自動計算します。

ステップ3:フルコスト単価で原価換算

メンバー別のフルコスト単価マスタを参照し、累計工数 × 単価 = 累計原価 を算出します。これが仕掛品計上額となります。

ステップ4:会計ソフトへの仕訳連携

算出された仕掛品額を、会計ソフトに仕訳形式で連携します。API連携対応の会計ソフトであれば自動仕訳投入、そうでない場合はCSV出力で手動取込です。月末3日の経理作業が、数時間に短縮されます。

第4章:月次クローズ短縮を実現する経理×PM連携設計

経理が見たい情報、PMが入力する情報

月次クローズ短縮の鍵は、経理とPMの情報の流れを標準化することです。経理が必要とする「案件ステータス」「進捗率」「未請求工数」を、PMが日常業務の一部として更新できる仕組みを設計します。

月末締めの段階的早期化

従来の「月末から2週間後の月次クローズ」を、以下のステップで段階的に早期化します。

  • ステップA:月初5営業日以内に工数入力を100%完了(PM主導)
  • ステップB:月初7営業日以内に案件ステータス更新(PM)
  • ステップC:月初8営業日以内に仕掛品計上(経理、自動連携)
  • ステップD:月初10営業日(5営業日※週末除く)以内に月次決算確定

監査対応のためのデータ証跡

工数管理ツール内で、「いつ・誰が・どのタスクに・何時間入力したか」がすべて履歴として残ることが重要です。監査時に「この仕掛品500万円の根拠」を問われた際、即座にタスク別工数明細を提示できる状態を作ります。

第5章:Task Relayが提供するWIP連携機能

Task Relayは、Salesforce上で動作する工数管理SaaSとして、仕掛品計上の自動化を標準機能で提供します。

  • 案件ステータス連動の月末仕掛品候補抽出
  • タスク単位工数 × フルコスト単価の自動原価計算
  • 会計ソフト連携用CSV出力(freee/勘定奉行/弥生等の標準フォーマット対応)
  • 工数入力履歴の完全保持(監査証跡として活用可能)
  • 進捗率自動算出機能(IFRS 15対応の進行基準適用案件向け)
作業 従来運用 Task Relay連携
進行中案件抽出 経理が手作業でリスト作成 案件ステータスから自動抽出
工数集計 Excel突合 タスク粒度から自動ロールアップ
原価換算 概算単価で計算 フルコスト単価で自動算出
会計仕訳投入 手入力 CSV出力 or API連携
経理工数 月末3〜5日 月末1日以内
監査証跡 Excel履歴 タスク別工数明細を即時提示

まとめ:WIP計上は「経理の頑張り」ではなく「自動化の対象」

受託会社にとって仕掛品計上は避けて通れない会計処理ですが、これを経理担当者の手作業に依存し続ける限り、月次決算は遅れ、監査対応も属人的なままです。

工数管理ツールから仕掛品データを自動連携する設計を導入することで、月末3〜5日の経理作業が1日以内に短縮できます。さらにIFRS/J-GAAPいずれにも対応できるデータ証跡が自然と蓄積され、監査対応の質も向上します。

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