プロジェクト管理 2026.05.06 PageView 3

稼働率(チャージ率)70%を実現する組織設計

稼働率(チャージ率)70%を実現する組織設計

会議・調整・修正で削られる稼働を構造的に減らし、組織キャパシティを取り戻す

はじめに:なぜ「稼働率70%」が組織目標なのか

プロジェクト型ビジネスの利益率を決める指標は何か——多くの経営者が「売上規模」「単価」「案件数」と答えますが、本質は稼働率(チャージ率)です。同じ単価・同じメンバー数でも、稼働率が10ポイント変わるだけで、組織全体の営業利益率は数倍のインパクトで動きます。

本記事では、稼働率70%を組織目標として実現するための運用設計を解説します。経営者・Deliveryマネージャー・PMOにとって、利益率改善の最短ルートとなる施策です。

この記事でわかること

  • なぜ70%が業界標準の目標値なのか
  • 稼働率を削る5つの「見えない時間」
  • 70%実現のための4つの組織設計レバー
  • Salesforce上で稼働率を経営KPIにする実装

第1章:なぜ70%が業界標準の目標値なのか

稼働率の定義:直接工数 ÷ 総稼働時間

稼働率(チャージ率)は、メンバーの総稼働時間に占める「売上に直接紐づく工数(直接工数)」の比率です。月160時間の総稼働のうち、112時間が直接工数なら稼働率70%。残り48時間は社内会議・調整・修正対応・社内業務などの間接工数です。

なぜ70%が現実的な健全水準か

100%稼働は「メンバーが終日タスクに張り付く」状態を意味しますが、現実的ではありません。組織には必ず以下の間接工数が発生します。

  • 会議・打ち合わせ(社内定例、評価面談、研修)
  • 調整業務(顧客との連絡、社内承認フロー、見積作成)
  • 社内業務(経費精算、勤怠申請、ナレッジ整備)
  • 採用・育成(面接、メンタリング、コードレビュー)
  • 待機時間(顧客からのレビュー待ち、決裁待ち)

これらを差し引くと、60〜70%が現実的な健全水準になります。70%を目標とするのは「目指せる現実値」だからです。

70%×フルコスト単価で利益率の天井が決まる

メンバー1人の月給50万円(フルコスト87.5万円)、月160時間稼働、稼働率70%、時給1.2万円で計算すると、月売上 = 160h × 70% × 1.2万 = 134.4万円。フルコスト87.5万円を引いて粗利46.9万円、粗利率35%。

稼働率が60%なら売上115.2万円、粗利27.7万円、粗利率24%。**稼働率10pt差で粗利率は11ポイント、粗利額は1.7倍以上の差** がつきます。

原則

稼働率は「努力で上げる指標」ではなく「組織設計で決まる指標」。会議体の数、承認フローの長さ、修正対応の発生率——これらの構造を変えない限り、稼働率は感覚的に「忙しい」状態のまま70%を超えない。

第2章:稼働率を削る5つの「見えない時間」

見えない時間① 社内会議

組織の稼働率を最も大きく削るのが、定例化した社内会議です。週次部門MTG、月次全社MTG、案件横串の進捗会議、評価面談——これらが積み上がると、メンバーの稼働の20〜30%を会議が占めることがあります。

見えない時間② 承認・調整フロー

見積作成の社内レビュー、稟議承認、勤怠申請、経費精算、社内ドキュメント作成——これらは個別に見ると小さくても、月に数十時間が消えていきます。

見えない時間③ 修正・差戻し対応

案件中の差戻し対応や仕様変更対応は、本来は売上に紐づく直接工数のはずですが、追加請求できていない場合は実質的に間接工数化します。「無償修正」が多発する組織は、見かけの稼働は高くても粗利が出ません。

見えない時間④ 顧客レビュー待ち時間

顧客からのフィードバック待ち、決裁待ち、レビュー待ちで案件が止まっている時間——これも稼働率を削る要因です。メンバーは「待ち」の間に他案件を進められるはずですが、実態は手持ち無沙汰になっているケースが多い。

見えない時間⑤ 採用・育成

採用面接、新人メンタリング、技術勉強会——重要な活動ですが、稼働率の観点では間接工数です。組織として必要な投資ですが、これを業績指標に組み込んで定量管理しないと、過剰投入になります。

第3章:70%実現のための4つの組織設計レバー

レバー① 会議の棚卸しと削減

組織の全会議体を棚卸しし、以下の判定で削減します。

  • 目的が曖昧 → 廃止
  • 報告のみ → 非同期化(Slack/Notionでの文書共有に置き換え)
  • 意思決定型 → 維持、ただし出席者を最小化
  • 定例化していて議題が薄い → 隔週・月次に頻度削減

多くの組織で、これだけで稼働率が3〜5ポイント上昇します。

レバー② 承認フローの自動化

見積承認・経費精算・勤怠申請・稟議をワークフロー自動化します。Salesforce Flow、Workflowツール、勤怠SaaSの活用で、月数十時間の調整業務をゼロに近づけられます。

レバー③ 修正対応の有償化

差戻し工数を可視化し、契約上の修正回数を超えた対応は追加請求対象とするルールを徹底します。これにより「無償修正」を減らし、稼働を売上に紐づけ直します。

レバー④ 待機時間の活用設計

顧客レビュー待ちの間にメンバーが別タスクを進められる体制を作ります。複数案件のアサイン、社内研修コンテンツ作成、改善活動など、稼働の「埋め草」を用意します。

第4章:Salesforce上で稼働率を経営KPIにする実装

実装① 稼働種別マスタに「直接 / 間接」フラグ

工数入力時の稼働種別マスタに「direct / indirect」フラグを持たせ、自動的に直接工数比率(チャージ率)が算出されるようにします。

実装② 組織別・ロール別ダッシュボード

部門別・チーム別・ロール別・メンバー別のチャージ率を一覧で可視化します。月次推移グラフ、目標値(70%)との乖離、改善傾向を見える化します。

実装③ 経営会議でのレビュー定例化

月次経営会議で「全社チャージ率」「組織別チャージ率」を必ずレビューします。70%を切っているチームには改善責任者を決め、原因(会議過多/待機時間/修正対応)を特定します。

第5章:Task Relayが提供する稼働率管理基盤

Task Relayは、Salesforce上で稼働率を経営KPIにする運用基盤を提供します。

  • 稼働種別マスタの「直接 / 間接」標準分類
  • 組織別・チーム別・ロール別・メンバー別の稼働率ダッシュボード
  • 月次・週次の推移グラフと目標値乖離アラート
  • 会議工数比率・調整工数比率の自動集計
  • 商談確度を加味した3か月先までの稼働率予測
ロール 健全水準 低下時の主因
SI開発職 70%以上 社内会議・修正対応
ITコンサル 65%以上 提案前の社内ナレッジ整備
制作職(デザイナー) 70%以上 差戻し・方向転換対応
CS職 60%以上 ナレッジ整備・トレーニング
PM 40〜50% 進捗管理・社内調整

まとめ:70%は努力ではなく組織設計で実現する

稼働率70%の達成は、メンバーの努力ではなく組織設計の結果です。会議の棚卸し、承認フローの自動化、修正対応の有償化、待機時間の活用——これら4つのレバーを動かすことで、構造的に70%を実現できます。

まずは自社のメンバー別チャージ率を概算で出してみてください。50%を切っているチームには大きな改善余地があります。

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